ものづくり/シャツのイロハ

ワイシャツのちょっとした知識

当社の一般的なメンズドレスシャツについてのご紹介です。

第10回
化学繊維のはなし 2

化学繊維とは
化学的な方法で人工的に作り出した繊維の総称が化学繊維です。原料や製法によって合成繊維、半合成繊維、再生繊維に分けられます。
近年の生産比率は化学繊維が約75%、天然繊維が約25%で、登場から100年余りで圧倒的に化学繊維の生産量が増加しています。


合成繊維2

合成繊維

ポリウレタン弾性繊維

ポリウレタン弾性繊維は、1940年ドイツで開発された繊維自体がゴムのように伸び縮みする繊維です。通常は芯にして天然繊維や化学繊維を巻いて使用されています。一般名は「スパンデックス」と呼び、用途はランジェリー、ファンデーション、パンディーストッキング、靴下、水着、スポーツウエアのほか一般衣料にも使われることが多く塩素系の漂白剤で脆化黄変するという欠点が有ります。

合成繊維

アクリル

ウールを目指して1950年にデュポン社が開発したのがアクリルです。合成繊維の中では最もやわらかく、保温性に優れ、軽く、回復性が高く、バルキー性や発色性に優れる、型崩れしにくい等の長所が有りますが、ピリング(毛玉)や静電気が起きやすいのがデメリットです。主にニット製品や寝装向けに使われています。

● アクリル繊維の走査型電子顕微鏡写真

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シャツのECOなはなしNO.1

形態安定加工をしたポリエステル・綿混の一般的なドレスシャツをライフサイクルアセスメント(*1)評価を行った結果、原料の生産から廃棄までのライフサイクルで排出された温室効果ガスをCO2換算すると約7kg(*2)という数字が算出されました。(弊社調べ)その内容は、生地の生産・・約60%、生地以外の原料の生産及びドレスシャツの製造(縫製ほか)及び輸送・・約20%、使用(家庭洗濯、軽いアイロンがけで着用回数80回を想定)・・約10%、廃棄(焼却)・・約10%、となっています。

生地生産工程での排出量が際立って高くなっていますが、ポリエステル・綿混の複合素材から、綿100%やポリエステル100%などの単一素材に変更するシュミレーションをした結果、約30%排出量が減少しました。
たとえば、ポリエステル100%のシャツを廃棄するときにケミカルリサイクルして再使用するという循環型生産システムが構築できれば、”低炭素社会”の実現に役立てるのではないでしょうか?

現状、日本国内のポリエステルを含めたプラゴミ処理の中でリサイクル率は84%を占めています。ところが、その内訳は68%がサーマルリサイクル(熱回収:熱資源として発電などに利用)、物理的な処理のみで製品に再生するマテリアルリサイクルが27%、化学的な処理法方法で新しい製品として生まれ変わる上記のケミカルリサイクルは5%に留まっています。

近年、異常気象が続き”地球温暖化現象”が社会問題となっていますが、ドレスシャツなどのアパレル製品も原料・消費・廃棄まで一貫して省エネルギーを意識した商品の開発に心掛けることが大切だと考えています。

*1 ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment : LCA)
私たちの周囲にある製品やサービスを、資源の採掘(生産)から製造、物流、使用、リサイクル、廃棄など、そのライフサイクル全体を通して環境に与える影響を客観的に分析、評価する手法。環境配慮商品の設計・製造には不可欠だといわれています。別名「製品のゆりかごから墓場まで」とも呼ばれます。米コカコーラ社がリターナブル瓶と飲料缶の環境負荷を比較したのが始まりといわれています。

*2 CO2排出量7kg
成長した杉の木は1年間に光合成で大気中のCO2を約14kg吸収しています。
つまり、計算上は一年に2着の形態安定ポリエステル・綿混シャツを消費して排出するCO2の量と杉の木一本の吸収量がほぼ同じという事になります。
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●次回は化学繊維のはなし第2回です。

写真提供:信州大学繊維学部Fii施設